軽費老人ホームにみる介護保険のあるべき姿

軽費老人ホームにみる介護保険のあるべき姿

 

世界の先進国であり、その中でも特に高齢化が進んでいる日本は、比較的社会保険制度が充実した国と言えるでしょう。これは戦前からいち早く年金制度を導入したり、戦後もアメリカ型の自己責任色の強い保険制度に向かわなかったことが、その歴史的背景と言えます。近年では同じく高齢化社会に突入しているドイツが、国主導の介護保険制度を導入したことを受け、この制度をモデルとした介護保険制度を導入しました。

 

しかし、現在、高齢者を取り巻く日本特有の事情により、こうした介護保険サービスが不十分であることが指摘されています。具体的な事例として挙げられるのが、「軽費老人ホーム」の事例です。

 

軽費老人ホームは、対象となる高齢者が無料もしくは低額で、住居や食事のサービスが受けられる施設です。ただ、入所条件として、高齢者が身の回りのことを自分でできることを前提としています。この場合、介護保険サービスが受けられません。介護保険は介護を事由として支給される保険であるためです。

 

その結果、軽度の介護サービスが必要となった場合に、比較的健康であるにもかかわらず、軽費老人ホームから、より介護色が強く自由度の低い別の施設に移動することになるケースが起きています。この場合、元気だった高齢者も、新しい環境では周囲が介護を受けていたり、生活サイクルが介護中心であったりするために、精神的に不健康になるケースが多いことが指摘されています。

 

こうした事態を受けて、従来の軽費老人ホームを進化させたものとして、介護サービスのついたケアハウスという施設も現れています。しかし、このケアハウスも重度の介護が必要となったときには、また別の施設への移動が必要であり、こうした高齢者の取り扱いは、まるで工場でのベルトコンベアー作業のようです。

 

行政は高齢者をモノとして効率的に扱うことだけを考えるのではなく、都市機能のひとつとして役立ってもらいつつ、支援するという形を取るべきではないでしょうか。現状のように単純に機能ごとの施設を分散させるのではく、小規模ながらも様々な介護需要に対応できるように施設設計した上で街の各所に設けるべきです。そうすれば、高齢者が比較的住み慣れた場所で、社会関係を維持しつつ充実した生活を送れるようになるはずです。

 

コストがかかる政策であっても、意義を明確に打ち出せば、市民の賛同は得られるのではないでしょうか?同時に現在不透明な介護保険の架空請求や水増し請求を一掃する方策を提示できれば、その動きは加速するはずです。

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